第五章ラジアントワールディリア





思い出していた。
ほんとにほんとに小さいころ、ユメと僕が森で遊んでいて、僕のかあさんは誇らしげにこう言ったんだ「リート王のおかげで平和だね」って。ユメも僕も嬉しかった。よく分からないけど、平和って言葉はいいものだって、それだけは感じたんだ。




「ユメ、死んだんじゃないのか?」
「彼らの話ちゃんと聞いていたの?人を作れる魔道術があって、私そっくりの人の箱物だけを作るのがむずかしいはずがないでしょ。」
「でもどうやって国を抜け出した?」
「頭使ってよ。自分で考えて。」
「リート王の使者であるローブの女と入れ替わった。」
「そうよ」
「どうして。」
「そうしなければならないから。現実から目をそむけては、本当に平和な世界は手に入れられないわ。」

僕は必死に頭を回した。考えたくないことだらけだけれど、必死に考えた。これは本質とは関係ないのかもしれない。でも一つのことに気づいた。

「じゃあなぜ、山道で僕を見逃した。わざわざ僕を小屋の方へおびき寄せてから精鋭班を殺した?」
「・・・あなたがユレイラントで、お父様の子供だって知っていたらそんなことしなかったわよ。」
「知らなかったからか。それは逆に、俺を魔道の操り人形だと思ってたことになる。殺してしまってもいいじゃないか?偽物なんだろ?」


「…あなたを殺したくなかったに決まってるじゃない」

そんな小さな声がわずかに聞こえた。


魔道による偽りの世界で生きていくことは、本当に良いことだとも思えない。でも、実験として多くの人間が作られ、勝手な全体の都合で消されていくことも正しいとは思えない。
リート王は後者を望まなかった。そして、ユメは前者を望んでいない。

 

どちらが正しいんだ? 天の橋での声は、魔道の人形なんてなかった過去に起こった大きな戦争。その時犠牲になった、ユレイラント達の叫びの声だ。おそらくユメもその試練を行ったはずだ。

その悲劇が二度と起こらない世界を見つけるための方法が、結果として今の偽りの世界を生み出した。そして、偽りの世界のままでいれば、それはそれで一見平和な世界であり続けられる。

 

僕は気づいた。リート王も、王女も、どっちも正しそうで、ほんとはどちらもまちがっている…!


「この世の理として繰り返されている、世界を試し、すべてを消し去り、また世界を試す行い。それ自体が間違っているんだ。魔道の人間に頼ったことがそもそもおかしいんだ。僕たちが傷つく代わりに、彼らが傷ついている。それならば、もうこんなことやめるのが一番なのではないか。ユレイラントが…本当の人間が、本当の人間だけで世界を作っていけばいい。魔道の人形なんて、実験はいらない。未来が分からないからこその世界だ。恐ろしい過去に怯えて、未来から目をそむけてしまっては何も始まらない。リスクを背負わずに、お試しを繰り返していても、何も得られない。過去から学び、何とかしようと前へ進んでいくから人間なんだ。今のユレイラントは人間じゃない!お前らが軽視する魔道の人形よりも人間じゃない!」

僕の八方を囲んでいた子供のような長老は、ハトが豆鉄砲を食らったような感じだ。一方のユメは、笑っていた。泣きながら笑っていた。伝わったみたいだ。

 

肩の荷が下りたのだろう、彼女はずっと泣いていた。

やることは山積みなんだけど、とりあえずいろいろ話を聞いてあげよう。

 

 

 

 

ラジアントワールディリア第一部(完)

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